お見合い相手は、アノ声を知る人
会長はさっき私に聞いた質問と同じことを彼の口から聞きたかったらしく、真っ直ぐに彼の方へと目を向ける。


「一路、お前、金曜日は確かに明里さんと一緒の部屋に泊まったんじゃな?」


ネタはバレとるぞと言いたげな表情に、流石の彼も頷くしかないみたい。

会長はそれに満足したかの様な笑みを浮かべ、胸を張ってこう足した。


「今は平成の世だが、これが明治やその前なら許せぬことだぞ。それを分かってやったんじゃな?」


「…あの、会長、それは…」


私がカクテルに酔っ払って仕様がなくですね…と助け舟を出そうとしたのに、彼はいいから…と手で止めて、前を向き直ってーー


「はい、分かってて彼女と同じ部屋に泊まりました。
酷く酔っていたし、寝てる間に具合が悪くなってもいけないと思って」


堂々と理由を述べてる彼を見直すような気持ちでいた。
いいぞ〜、頑張れ〜!と心の中でエールを送った。


「それが本当なら何もしておらんと言っとるようにも聞こえるが?」


少し機嫌が悪そうに眉根を寄せる会長。

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