恋するオフィスの禁止事項 ※2021.8.23 番外編up!※
先輩が少し冷たいかもだなんて私の勘違いだったようだ。
私のために他部署の人に言い返してくれたし、なによりこうして私のことを心配して様子を見にきてくれたわけだし。
こんなに気にかけてもらってるのになんて贅沢な思い違いをしていたんだろう。
それに気づくと、ふと、以前先輩にキスをされたことを思い出した。
「あの、先輩」
「ん?」
「先輩は彼女いますか?」
キスをされた理由なんて今さら聞けないけど、この質問なら許されるはずだ。
だって私も前にエレベーターの中で、先輩に聞かれたんだから。
「……いないよ」
「そうですか」
「なんで?今までずっと聞いてこなかったじゃん」
「そりゃずっと気にはなってましたけど、聞けなかったんですよ。なんでかは分かんないですけど……」
「そっか」
「どうして彼女作らないんですか?先輩格好いいしすごくモテるじゃないですか。職場じゃなくても、プライベートならいくらでも」
「別に理由なんてねーよ。水野、この話は終わり。仕事中だろ」
──え?
先輩はケロリとそう言っただけだったけど、私はひどく突き放されたような気がした。
「あの、先輩。言っときますけど最初は先輩から聞いてきたんですからね!私に彼氏いるのかって」
「……そうだな。ごめん。俺ももう聞かないから、水野もそういう質問はナシな」
ちょうどエレベーターがフロアに到着して、私たちはデスクへと戻っていく。
後ろ姿を追いかけながら、先輩を遠くに感じた。