恋するオフィスの禁止事項 ※2021.8.23 番外編up!※
近づいたり離れたり
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それから私は仕事に没頭した。
“先輩のプライベートには立ち入らない”ということは、仕事をする上では全く障害にならなかった。
思えば私たちは普段からそうだったし、先輩は何も変わらず面倒を見てくれる。
ただ私のほうが勝手にショックを受けただけなのだ。
しかし落ち込んでいる暇はない。
私の仕事は企画が通ったことで今は波に乗っている状態。
書庫に歴代のコーヒーメーカーの営業企画書が保管されていると課長にアドバイスをもらい、私はさっそくそれを取りに行った
「あの、水野さん!」
書庫に入り扉を閉めようとすると、とある女性社員がその扉を押さえ、こちらへ入り込んできた。
見たことがある。たしか、コスメ部門の荒木さんという人で、よく浅見さんと一緒にいる美人な先輩だ。
「はい。何か?」
「あの、聞きたいことがあるんだけど……今忙しいかな?」
「いえ、ちょっとなら大丈夫です」
お化粧が上品でとても綺麗で、おそらくこんなに発色がいいのはスローライフの商品ではなく、海外ブランドのものだろう。
彼女から漂ってくるコロンも高級な香りがする。