恋するオフィスの禁止事項 ※2021.8.23 番外編up!※
どうしよう……。
三つも年上の人のお願いだし、先輩の同期だし。
ここですぐに断れば角が立つのは間違いない。
コスメ部門にも私のことをあれこれ言われて、また先輩に迷惑をかけることになったら嫌だ。
「……前回は本当にたまたま行ってくれたんだと思います。私が誘ったって、忙しいって言われてしまうと思いますよ」
「それでも私が誘うよりは上手くいくと思うから。ね、お願い」
荒木さんは私が「はい」って言うまで、多分引き下がらないだろう。
「……分かりました。考えてみます」
仕方なくそう答えて、私は書類を探しながら、少し急いでいる素振りを見せた。
「本当?ありがとう!結果は内線か社内メールで送ってもらっていい?」
それはだめだ。社内メールを私用では使わないって先輩と約束したばかりだから。
「いえ、荒木さんの携帯の番号教えてもらってもいいですか?そちらにご連絡します」
「そう?わかった、じゃあこれね。ごめんね、ありがとう」
可愛らしい付箋に番号を書き、それを私に渡すと、先輩は先に書庫を出ていった。
キラキラして綺麗な爪だった。