恋するオフィスの禁止事項 ※2021.8.23 番外編up!※


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この日の夕方、このオフィスには私と先輩だけとなった。

会議が長引いていて課長も部長も戻らず、他の社員はみんな定時で帰っていった。

先輩は相変わらず残業で、まだ帰る気配はない。

私もデザインの最終案が決まったことで、営業部との打ち合わせの資料づくりに追われていた。

無言でふたり分のタイピングの音が響いている。

私は桐谷さんに最低限のことのみ質問して、他のことは過去の資料を見ながら自分の力で解決していった。

これ以上私が負担をかけてしまったら、先輩の残業がいつまでも終わらないからだ。

「なあ水野」

沈黙を破ってきたのは、先輩のほうからだった。

「はい」

「終わりそう?大変なの?」

「いえ、大丈夫です。何を書けばいいかは分かってはいるんですが、ちょっと手間取ってるだけで……」

自分のピンチには何度も助けてもらったのに、先輩が忙しいときにお手伝いができなくて情けない。

相変わらず自分のことで精一杯で、ダメな後輩だ。

「水野」

先輩は手を止めた。

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