恋するオフィスの禁止事項 ※2021.8.23 番外編up!※
会議室を出てから、先輩にもう一度会釈をした。
「桐谷さん、ありがとうございました。お礼にお昼奢らせてください!」
「はぁ!? やだよ、なんで後輩に奢られなきゃならないんだよ。それに打ち上げなら普通は終わったあとだろ。気ぃ抜くなよ」
「それもそうですね……じゃあ、夕飯はどうですか!」
「……え、なに。夕飯?」
先輩の綺麗な顔がちょっとだけ歪んで、目がキョロキョロと泳ぎ出した。
この表情はなんの表情?
「はい。プレゼン終わったあとなら、夕飯になりますよね?お願いします。こんなに迷惑かけておいて、何もお返しできないなんて私が申し訳なさすぎます」
「……夕飯って、仕事終わった後ってことだろ?業務時間内じゃなくて」
当たり前のことを、先輩は詳しい説明を添えて聞き返してくる。
「はい。あ、もしかして予定ありますか?それなら大丈夫です、日を改めて……」
「いや、予定はない。分かった。行くか」
「はい!」
「ま、祝賀会になるか反省会になるかはまだ分かんねぇぞ。場合によっちゃ説教になるかもな」
「先輩〜!そんなこと言わないで下さいよ~!」
先輩に筒状に丸めた資料で頭をポコンと叩かれると、午後に向けての緊張が解けてリラックスできていることに気付いた。
これも先輩は計算しているのか、それとも自然にやってのけてしまうのか。
先輩って、私のこと、よく分かってるんだなぁ。