恋するオフィスの禁止事項 ※2021.8.23 番外編up!※
「はい」
「俺の隣おいで」
先輩はわざわざ自分のパソコンを閉じて作業を中断すると、定時までは松本さんがいた隣の席を指差した。
「隣……ですか?」
先輩がこんなに私の目を見て微笑んでくれたのは、久しぶりな気がする。
「おう。こっちで資料見てやるよ」
「い、いいですよ!大丈夫です!先輩だってすごく忙しそうなのに……」
「いいから。おいで」
“おいで”という甘い言葉に、素直に甘えたい衝動にかられた。
「は、はい。お願いします」
先輩の隣の椅子に座って資料を手渡すと、先輩はさっそくそれに目を通し始めた。
資料は数十ページあるから、読み終えるまでにしばらくかかるだろう。
どうして急に見てくれる気になったんだろう。
この間は見てくれないと言っていたのに。
ずっと気になっていたけど、先輩はこの数ヶ月、言っていることが二転三転してはいないだろうか。
心なしか元気がないようにも感じるし、それを払拭するようにいきなりいつも通りになることがあるし。