恋するオフィスの禁止事項 ※2021.8.23 番外編up!※
「いい後輩だな、水野は」
「先輩……?」
「水野は本当に、出来のいい後輩だよ。仕事もできるし、真面目だし、根性もあるし。面白いしな。教えがいがあるっつーか、ついこうやって構いたくなるよ」
「な、なんですかいきなりっ」
そんな言葉が欲しいわけじゃなくて、先輩の力になりたいのに。
優しく撫でられながら、嬉しさもある反面、悔しさは消えないままだった。
「この資料はとりあえずこれでいい。予測データも分かりやすくまとまってる。でもその理由付けのデータはもっと細かくまとめていかないと、営業部の奴らはしぶといから納得しないよ」
「は、はい。ありがとうございます……」
資料を返されると、先輩の椅子はまた少し離れていった。
やっぱりこれって、誤魔化された……?
「……なあ水野」
「え」
離れたはずの椅子が、また近づいてくる。今度はすごく近くまで。
「あの、先輩……」
「俺、そんなに顔に出てる?」
「え……?」
そのとき至近距離で私にだけ見せた先輩の顔は、つらそうに歪み、寂しく笑っていた。
どうして、そんな顔をしてるの?
「先輩……どうしたんですか……?」
「水野、俺さ……」