恋するオフィスの禁止事項 ※2021.8.23 番外編up!※
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最終日は金曜日だということもあり、商品開発部全体の大規模な送別会が催された。
桐谷さんの送別会なだけあって女性社員の出席率は百パーセントで、会場は飲み屋の大広間を貸しきっての開催。
「や~だ~!私たちを置いて桐谷係長だけ行かないでくださ〜い!」
「私たち何を生き甲斐に仕事すればいいんですか~!」
乾杯が終わると桐谷さんの周りには女性社員が何人も陣取っていて、そこにはちゃっかりと浅見さんや荒木さんの姿もあった。
とても私がそこへ入っていく隙はなさそうだ。
先輩は、今日ばかりは女性たち一人ひとりにお礼を言っている。
私はと言えば、端のほうで課長と飲んでいた。
「いいの?桐谷くんのところに行かなくて」
「え?」
課長はニコリと大人っぽく笑って、そう言った。
「……いいんですよ。正直言って私、全然実感が沸いてないんです。行かないで~って泣いちゃう人たちのほうが、今日はたくさん先輩と話すべきなんですよ」
「なるほどねえ」
そのあと課長はぽつりと、若いねえ、と言った。
「それにしても、水野さんは半年なのによく育ったわよ」
「課長や先輩のおかげです」
「違うわ。実力でしょ。だいたい実力がなきゃ、桐谷くんがどうしてもあなたをこの部門に入れたいなんて駄々を捏ねたりしないわよ」
「……あ」
そうだ、私はそのことを、まだ先輩にちゃんと聞いていなかった。