恋するオフィスの禁止事項 ※2021.8.23 番外編up!※

「あの、それはどういう経緯でそうなったんでしょうか。私、ここに来る前に桐谷係長とお会いした記憶はないんです」

「水野さん、池袋中央店にいたでしょう?桐谷くんはそのときに会ったことがあるって言ってたわよ。そこで目を付けてた社員が、たまたま商品開発部に配属になる予定になってるのを本部長から聞いたって。池袋時代に何か心当たりはないの?」

「ないですよ、そんなの、全然……。先輩は店舗にはいなかったですし、池袋は大きいから一日に何人も店頭調査に来ることがありましたし……覚えてないです」

するとそこへ、何人か女性を引き連れたままの桐谷先輩がビール瓶を持ってやってきた。

「課長、本当にお世話になりました」

先輩は課長にビールを継ぎ足すと、私を含めて三角になるように腰を下ろした。

そこでやっと先輩が他の女性たちに「課長と話したいから、ちょっと遠慮して」と言ってきかせ、ばらばらといなくなっていく。

「おめでとう、桐谷くん。さすがね」

「ありがとうございます。さすがって何がっすか」

「モテモテみたいだから」

課長がそう言ったとき、先輩は少し私のことを見た。

私は目を逸らすでもなく、かといって見つめるわけにもいかず、少し微笑んで応えた。

「まあ……今日きりなんで、皆遠慮してくれないんですよ。バーゲンか何かだと思ってるみたいですね」

「あはは、たしかに」

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