恋するオフィスの禁止事項 ※2021.8.23 番外編up!※
司会に音頭が戻されて、その後ろで女性社員数人がコソコソと大きな花束を準備していた。
花束贈呈。本当に、これが最後だ。
「では、お世話になった桐谷係長へ感謝を込めて、花束を贈呈したいと思います。……えーと、では。僕の独断ですが、生活雑貨部門の、水野さん!」
──え。
「は、はい」
「桐谷係長の一番弟子。係長の唯一の心残りだという水野さんから、花束を渡していただきます」
ブーイングの声はあまりなかった。
先輩がさっきの挨拶で、私のことが心残りだという話をしてくれたおかげで、会場は私が花束を贈呈することに異論はない空気となっていた。
花束を準備していた女性の先輩からそれを受け取りに行くと、しぶしぶ渡してくれて、私はそれを抱えて、先輩の横へ歩いていった。
脚が震えてる。
花束を持つ手も震える。
緊張しすぎて仏頂面になっているはずだ。
その証拠に、対面した先輩が、苦笑いをしている。