恋するオフィスの禁止事項 ※2021.8.23 番外編up!※
すると、ひたりと、先輩がドアに手をついた音がした。
『……水野さぁ、なんでそう思うの?』
ゆっくりと語りかけられた言葉に、私はごくりと息を飲んだ。
『ずっと傍にいたお前に、俺と離れたくないって、行かないでくれって泣かれたら……普通は可愛いと思うだろ』
──え?
『お前、最初は全然寂しそうにしてなかっただろ。俺が異動になったのにずっと笑ってて、さすがに俺もショックだったんだぜ。俺がいなくても何とも思わねーんだなって。そんな感じだったのに、今日は離れたくないって泣くし。卑怯だろ。可愛いと思って悪いかよ』
やだ、嘘、先輩それは、どういう意味……?
可愛いって、私が?
「だって、それは先輩だって同じじゃないですか!異動願を出したって言ってたから、私と離れたって別に平気なんだと思ったし、送別会でも、このタイミングで異動になって嬉しいなんて言ってたじゃないですか!」
『そうだよ、嬉しかった。俺は普通は二年のスパンで異動になってきたんだ。それが生活雑貨には二年半在籍できた。いつもより半年間長かったおかげで、水野と半年かぶってた。あと半年短ければ、お前には出会えなかったんだ。お前に出会えてから異動になったんだから、嬉しいに決まってるだろ』
嘘……そんな私に都合のいいことばっかり……そんな夢みたいなこと……。