恋するオフィスの禁止事項 ※2021.8.23 番外編up!※
「あのとき水野の言ってたことは正しかったんだよ。お前がいた池袋中央店は予想を越える売り上げになった。すぐに水野に言われたことを持ち帰って営業部にかけあってレイアウトを変えてみたら、同じように売れた。俺の作った商品も称賛された。……あのときはお前に助けられたよ」
「そうだったんですね……」
「……でもそれだけじゃない」
抱きしめている腕に力が込められた。
「あのとき見たお前のことがずっと忘れられなかった」
「先輩……」
「本部から俺みたいな若い社員が視察に行くと、売場の社員は手を止めてプライベートな雑談をしてくることが多くて、正直あの頃は行きたくなかったんだ。でもお前は、俺のことなんか眼中になくて、俺の作った商品を売ることだけに夢中になってた」
「そんな、そんなこと」
「そのあとお前が商品開発部に来ることになったのを偶然知って、インテリア部門を希望してることも知ってた。……でもどうしても俺のところに来てほしかった。お前ほど俺と感性が合う奴はいなかったんだよ。お前と一緒に仕事がしたかった。……それはずっと仕事上の感情だと思ってたんだけど、今思えば違ってた。もう俺のほうがずっと前から、公私混同してんだよ」
全然知らなかった先輩の気持ちが嬉しくて、ようやく私からも先輩の体をギュッと抱きしめ返していた。