恋するオフィスの禁止事項 ※2021.8.23 番外編up!※



体温が急上昇してしまい、それに気づいた先輩は、私の返事を待つよりも早くキスをする体勢を作っていた。

上から近づいてくる先輩の顔、すごく格好良くて、目まいがしそう。


「先輩……」

「していい?」

「……はい」


返事とともに先輩はゆっくり口をつけて、そして口をつけるだけのキスから、だんだんと深いキスへ。

私も背伸びをして先輩の襟に手を回していた。


「ん、先輩……せん、ぱいっ……」


もっと先輩とキスしたい。

もっと先輩に会いたい。先輩と一緒にいたい。

その気持ちをキスでぶつけると、先輩もそれに答えるようにキスは激しくなっていく。

いつしかエレベーターの壁に追いやられて、押し付けられながらのキスとなっていた。

ふと先輩が体を離した。


「ごめん、これ以上したら多分止まんないから、やめとく」


肩で息をしている先輩の余裕のない姿に、余計に体が熱くなってしまった。これじゃあ私だって止まらない。

でも誰かが来たら止めなきゃいけないし、そのときにこんなところを見られたら大変だし……先輩の言うとおり、もうここでやめなきゃ。


「そんな顔すんなよ」

「だって……」

「お前ほんと煽るの上手だよな……なあ水野、そしたら今日さ」


ピンポーン

気づけばエレベーターは動きだし、1階に到着していた。

キスを止めたとは言えそれでも近かった私たちは、反射的に距離をとった。

ドアが開くと、そこには業者の人が待機していて、私たちは心配されながらエレベーターを降りた。

すぐにエレベーターは使用禁止にされ、目的地についた私たちはさらに別々の行き先へと向かって、何事もなかったように別れていく。

でも一度だけ振り返ると、先輩もこっちを見ていた。
指で輪っかを作って、オーケーのサインを送った。


『なあ水野、そしたら今日さ、俺の家来る?』


きっとそんなお誘い。



end
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