あなたの為に、唄います
6限が終わって、放課後。
まだ、謎の複雑な気持ちは続いている。
今日は声楽のレッスンが夕方の7時から。
それまでいつも、4番地にある公園で歌っている。
折らない紺のスカートに、白のブラウスに赤いリボン。二中の安っぽいありきたりな制服で
こんな綺麗な公園にいるのは恥ずかしい。
だけど一度家に帰るのも、面倒。
春希君の写真を見る前まで暗譜していた新しい楽譜を取り出し音を取る。
チューナーをセットしてメトロノームを動かして。静寂な住宅地にメトロノームの音と、
私の声だけが響く。
少しの寒さが、公園の木の葉とコスモスを揺らす。夕焼けが、なんとも言えず綺麗だ。
4脚、小さい公園を取り囲むようにおかれたベンチにはだれも座っていない。誰かがおいたであろうジューズの缶のみが、置いてある。
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