陸の漁り火
「暗闇に、真っ黒い目があったんだ」

 真っ暗闇のなかに、どうしてだか黒い目がぽっかり浮かんでた。

「変だろ? 何にも見えない闇の中に黒い目だなんて」

 見えないはずの場所に目だけが見えたんだ。

「さすがに怖くなって、慌てて甥の手を引っ張って帰ったよ」

 そう言ったダチの顔が俺は忘れられなかった。

 蒼白で、なのに目だけがぎらついていて、恐怖だけでなく、他のなにかを得たような、そんな顔つきをしていた。




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