雪夜の月
雪夜の月
少年の物語
「私のこと好き?」
「好きだよ」
見つめ合う2人の先にはロウソクの炎が揺れている
窓の外は雪がシンシンと降り積もっている
「どのくらい好き?」
「凄く好きだよ」
「それって具体的に言ったらどのくらい?」
「そうだね あれは真っ暗なトンネルの中だった」
少年がなにかの物語を話そうとしていると少女にはわかった。
少女は黙って続きを聞いた。
真っ暗なトンネルの中右も左もわからない それどころか前さえもわからない。
こっちが本当に前なのか はたまた戻っているのではないか 少しずつ不安が積もる。
少しずつ 少しずつ
結構進んできただろう 本当は進んでないのかもしれない
僕は耐えきれなくなった。
前も後ろも分からず 無我夢中に進んできたはずなのに一向に出口が見えない。
僕は立ち止まった。
諦めたんだ。
不安が積もりきった。
僕は座り込んだ。
辛くなったんだ。
涙が込み上げてきた。
僕は目を瞑った。
すべて嫌になった。
何も見えないところで目を開ける事が嫌になった。
ふとした時だ。
何かの前触れがあった訳じゃない。
ただ 気がしただけだ。
光が瞼を突き抜けて気がした。
僕は目を開けた。
祈ったのだ。
真っ暗な世界からの出口を。
僕は目を凝らして見た。
微かに見える気がする。
いや、あれは光だ。
確かに光だ。
僕はまた歩き出した。
その微かな光に向かって。
僕は歩き続けた。
光は次第に大きくなっていく。
「その光ぐらい君が好き。 君は僕の事、好きかい?」
「好きだよ」
「どのくらい?」
「それは・・・」
次は少女が物語を話した。
窓からは月の光が2人を照らした。
終