ご令嬢は天才外科医から全力で逃げたい。

強引な男に翻弄されて。



披露宴会場に無事に辿り着いた私は、新婦の仲川美嘉に感謝されて時の人みたいになってしまっていた。

仲川の職場の上司が倒れた男性だったようだ。

一緒に現れた、二条慧も同じ状態に憂鬱そうに手元のシャンパンを飲んでいた。

「美桜、凄く格好良かったよ!
まるであの時みたいだったー。
あんたの安定感、変わらないね!よっ美桜様。」

梨夏は、ほろ酔いの状態で嬉しそうに私に絡んで来る。

「はいはい・・。もう、酔いすぎだよ梨夏は。
酒癖悪いから程ほどにしないと、また泣き上戸になって騒ぎ出すよ。」

新婦の美嘉は、新郎と目を会わせてクスクスと笑っていた。

無言でシャンパンを平らげてる二条慧は、その美貌で皆の注目を一身に浴びていた。

「まあまあ、今日は祝いの場だし、
無礼講だよ!
さぁ、美桜ちゃんも今日は仕事も、教授からの呼び出しもないんだろ?
飲んで飲んで!
ほら、二条先生も飲んでください!」

微笑む二条慧は、紳士的で落ちついた印象を醸し出していて、先程のアグレッシブさは感じない。

・・詐欺だ!

「そうだ!あんたさ、彼氏いないんでしょ?
金城にこの場で紹介してもらえば?」

二条慧は、ピクリと眉を動かす。
その様子を見てた、新婦の仲川美嘉は驚きの表情で見ていた。

「は?いないんじゃないの。いらないから!!
勘弁してよ、もう!」

「山科は昔から、めちゃめちゃモテるのに彼氏作らないから男嫌いって噂になってたよな。
今はそんなことないの?うちのゼミでも、山科ファンは沢山来てるけど・・。」

梨夏は、ニヤニヤ笑っているし、新郎の金城は嬉しそうに思案していた。

「あっ、でも。美桜は許嫁がいるから無理か!」

ハッと思い出したように梨夏が私の方を見る。
私も肩をすかせて小さく頷いた。
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