ご令嬢は天才外科医から全力で逃げたい。
何が起こっているのか解らなかった。
唇は、深く食むように奪われて腰を引き寄せられる。
ちょっと、、待って。
何よ、これ!?
涙目になった私は思いきり、目の前で貪るような口づけを繰り出す男の腹にありったけの力を込めてパンチを繰り出した。
「ちょっと!!何するのよ・・!」
頬を真っ赤に染めた私は、慌てて唇を拭って睨み付ける。
「痛っ・・!!君の唇は甘いな・・赤くなって・・可愛い。」
クスッと意味深な笑みを浮かべてこちらを見下ろしていた。
「二条先生!!私をからかうのは止めて下さい。
こういった冗談は大嫌いなんです。それに好きでもない人とキスなんてあり得ない!」
「好きでもない人ね・・。
さっき言ったばかりだよ。
もう忘れた?
本気だって、逃がさないって忠告もした。」
私はぐっと唇を噛んで睨み付ける。
そんな私に、二条慧は楽しそうな様子で笑っていた。
「来週から、宜しくね、美桜・・。」
くるりと背を向けて去っていく。
颯爽と披露宴会場に戻っていく二条慧の背中を見ながら、不安が過った。
私はシャンパンを飲み過ぎたのか、お酒が体内を回って熱かったのか、それとも、さっきのキスのせいで身体が熱くなっているのか分からなかった。