ご令嬢は天才外科医から全力で逃げたい。

病院の従業員が集う食堂では、今日も二条慧の手術の話で持ちきりだった。

「いいなぁ山科さん！
二条先生に猛烈なアプローチ受けてるんでしょう？なんで受けないの？今、付き合ってる人いるとか？」

「いないんですけどね・・。
ただ、二条先生は苦手なタイプなので・・。」

「二条先生可愛そう。
今日も難しい手術を難なく成功してたのよ。
あの器用な手先、あの容姿。
私だったら、彼と絶対付き合うのに。
勿体無いよ！！」

女子力が高そうな、みつあみを可愛く纏めたヘアスタイルをお洒落なピンで止めてた女性は意外そうにトレーを片手に席へと戻ってく。

カレーを頬張りながら、外科のナースに声をかけられて味わいが飛ぶ。

「凄い方なのは、認めるんですけどね。」

各所で呼び止められてこんな内容の質問ばかり聞かれる。

全て二条慧のせい・・。

「付き合ったら付き合ったで文句いいそうなのに、美桜ちゃんも大変ね。
天才でイケメン、お金持ちなんて３拍子も、４拍子も揃いすぎだものね。
でも、毎日あんなに追いかけられて、執着されたら怖いわよね。」

「そうですね。私には、二条先生に気に入られた理由が分からないんです。
初対面からアグレッシブで翻弄されてばかりで・・。」

「案外、本当に一目惚れかもよ？
それも本人と一度ちゃんと話してみないと分からないかもしれないわよ。
聞いてみたら良いんじゃないかしら。」

「確かに・・話してみないと、ただの不振な人で終わりますよね。」

カレーを頬張りながら、うっすら秋元咲の言葉に少し納得したのだった。

夕方、医療相談室に宣言通りに現れた二条慧と一緒に帰ることにしたのだった。