ご令嬢は天才外科医から全力で逃げたい。

可愛い靴やドレスやワンピースが綺麗に陳列された高級ブティックの中。

居心地が悪い私を他所に、二条慧は、彼をうっとりとした表情で見上げる上機嫌の店員も巻き込んで
私を全身着せ替え人形にしていたのだった。

ホワイトと、淡いピンクのシフォンワンピースに、陶器のカップのような斬新で可愛いデザインの靴を身に着けた私がショーウインドウの近くにある
全身鏡の前に立っていた。

有名ブランドの靴は、私のアルバイト代の半分は一気に吹っ飛ぶ額だった。

「よくお似合いですよ！！お顔も小さいですし、まるで女優さんみたいですね！」

興奮気味の店員さんが、私を下から上へ、上から下へと視線を走らせて満足そうに頷いていた。

「うーん。これでいいかな・・。
美桜は着る物、着る物全部似合うから迷うけど・・。じゃあ、このまま着たままで頂く。」

黒いＶネックのＴシャツにジャケットをかけて、脚を組んだ姿勢で本物の芸能人のようなオーラを出して店内の客の注目を浴びている二条慧はさらっと飛んでもない台詞を吐いた。

「あの・・。これはどんな羞恥プレイですか？そもそも、こんな可愛いワンピース何処に着ていくんですか！？」

財布からブラックカードを出しながら、振り返って当たり前のように言い放った。

「俺とデートする時。他にある？」

来たー！！

俺俺発言だ・・。

「いやです・・。あの、私はスニーカーの方が歩きやすいし、ポロシャツの方が楽です。」

「ああ、勿論、普段の君も美しいよ。
君はただでさえ綺麗だが、更に君の美しさが際立つ装いだと思う。
それに、今日は君の誕生日だろ？」

私は、驚いて二条慧を見上げた。

「なんで、知ってるの？貴方に一言も言ってないのに・・。」

「聞かなくても知ってる。今日は君の生まれた大切な日だろ？一緒に祝いたいんだ、頼む。」

必死に頼み込む彼に根負けした私は、苦い顔で頷いた。
私の返事を聞いた二条慧はボソッと何かを呟いて嬉しそうに微笑んだ。

その笑顔が本当に嬉しそうだったので、私もつられて何故か笑顔になってしまった。