ご令嬢は天才外科医から全力で逃げたい。
「ああぁああっ。私、あんな強引な俺様タイプの男に・・、こーんなに!弱かったっけ!?」
「人ん家に来て早々、ビールを飲んで叫ぶ女もあんたくらいよね・・。」
呆れた顔で、ビールを片手につまみを食べている理央が笑っていた。
「それよりさ、凄い男だね・・。なんか、映画の世界みたい。まるで、プリティウーマンみたいな?」
「うん・・。あのブランドのワンピース、10万円は下らないと思う。明日から頑張って節約しなきゃ!!」
「返さなくていいって言われたんでしょ?誕生日プレゼントなんだろうしさ。受け取っておけばいいんじゃない?」
私は、お通夜のように真っ青な顔で理央を見つめる。
「え、どうしたの?他にも何かあった?」
私は、自分のバッグからポーチを取り出してそこのポケットからある物を抜き出した。
コロンと、テーブルの上に転がり虹色の光を放つ石が台座に嵌めてある銀色のリングが転がった。
慌てて理央がリングを掴んで、目の前に持って来て確認する。
「ちょっと・・これダイヤじゃない?どうしたのこれ・・。」
「指に嵌ってたの。・・降りてから気づいた。もう何て男なのあいつー!!」
車から降りた後、左手の薬指に輝く物が目に入った私は驚いて二条慧にすぐに電話をかけた。
「ああ、それプレゼント。俺の覚悟の証だから。」と言われた。
「絶対、病院で会ったら即返すわ。何で私、あの人に振り回されてるんだろう。
こんな事今まで無かったのに・・。」
理央は、空けたビールをテーブルに置いた。
「それは、あんたが意識的に男を遠ざけて来たからでしょう?鉄壁の防壁も二条慧の前ではただの板みたいなもんね。でもね、私はいい傾向だと思うよ?少し嬉しいよ。」
「何でよ・・。問題は山積みなんだよ!?二条慧なんて苦手なタイプだし・・。」
「そうかなー。あんたが好きでもない男に二回もキスされるなんて考えられないけど・・。本当に嫌ならそんなに
近寄らせない筈でしょう?勿論、強者である事は確かだと思うけどね!」
「嫌いではない・・。俺様だけど、優しいとこあるし・・。」
「焦らなくてもその内、答えは出ると思うよ。・・あんた鈍感だしね!」
理央の言葉はもっともで、正論だった。
私は、ぐーっとビールを飲み干し、その日は久々に酔っぱらってしまったのだった。