ご令嬢は天才外科医から全力で逃げたい。

青山にある邸宅で催された挙式・披露宴会場はプール付きの豪華な会場だった。

私は、クローゼットの奥にしまってあったグリーンのドレスを引っ張り出した。
有名ブランドのデザインのモノでシルクの襞がふわりと広がる美しい光沢のあるドレスだった。


髪を自分でクルリと巻き、普段開けないアクセサリーケースの中からパールのピアスを耳に刺した。

慣れないハイヒールを靴箱から取り出してそっと玄関に並べて履いてみる。

グラリと揺れる、バランスの悪さに焦りを感じたがいつものピンクのリップではなく、紅を差した私は
玄関の鏡の前に立って微笑んだ。

「さあ、行くわよ!!」

気合いを入れて、家を飛び出した。

駅から緊張気味に坂を上っていくと、豪奢な邸宅が現れる。

そこの受付で招待状を渡して、記名をしていると後ろから懐かしい声がした。

「美桜??美桜でしょう??」

大学のゼミで一緒だった梨夏が立っていた。

「梨夏!!久しぶりー!!」

さっきまでの緊張感が吹き飛び、ショートカットのゼミのムードメーカーであった
梨夏の明るい笑顔に癒される。

「ねえ、3年ぶりじゃない?卒業して以来だもの!!
聞いたよ美桜。うちの博士進んでるんだって?凄いじゃない!!」

「奨学金で博士行ながら、病院でアルバイト三昧だよ。
梨夏こそ、お仕事頑張ってるんでしょう。」


「土日休みの日は、いつも死んだように寝てるんだけどね。
やっぱり、女の営業は厳しいわー。
あっ、それより、博士進むって・・お家の方は大丈夫なの・・?」

心配そうな表情で梨夏が私を覗き込んだ。

その時だった。

<ガッターーン・・・!!!>

大きな音が背後から聞こえて来て、私と梨夏は驚いて振り返った。

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