ご令嬢は天才外科医から全力で逃げたい。
「「ピンポーン」」
「「ピンポーン・・ピンポーン・・ピンポーン」」
「ああっ!しつこいな・・何なんだよ。」
何度もしつこく鳴り響くインターフォンの音に、嫌そうに身体を起こして通話ボタンを押した。
「どなたですか?」
「二条記念病院の医療相談室に勤務しております、秋元咲と申します。そちらに、山科美桜来てますよね?
彼女に渡したい物があって来ました。」
このマンションはコンシェルジュも完備した高級マンションだった。
様々なリスクを考え、今は美桜を引き渡した方が得策だと判断した。
スーツを脱いで肌蹴たシャツを身にまとってネクタイを緩めていた海は、うっとおしそうに私の方へと視線を向けた。
涙が溢れて呼吸が出来ない状態になった私を見て、海は表情を一気に曇らせた。
「・・・分かりました。玄関で待ってて下さい。彼女を連れていきます。」
オートロックを解除し慌てて、美桜の側へと駆け付けた海は状態の異常さに気が付いて額に冷たい汗が流れる。
「おい・・。おい美桜!?おい!!しっかりしろ!!」
横たわったまま、顔面蒼白になり呼吸が出来なくなっていた美桜の脈を取る。
「頻脈、パニック発作か!?」
息苦しさに身もだえながら、視界がぼやけていく。
「「ガチャッ」」
玄関から、誰かが入って来た音がした。
足音が・・3人分?
誰・・・。
「なんで・・お前ら勝手に・・。」
バキッ。
・・ガターン・!!!!
「美桜ちゃん!?ちょっと・・あんた!何てことすんのよ!?」
「おい・・山科さんの様子が可笑しいぞ、二条!!」
秋元先輩の・・声。
さっき、何かが倒れた音がした・・・。
二条 慧が唇を歪めて泣きそうな顔で私をのぞき込んだ。
「美桜!?・・美桜!!意識が・・・。クソッ。」
ぼやけた視界が真っ白に覆われる。
私はそのまま意識を失った。