ご令嬢は天才外科医から全力で逃げたい。
そっと耳朶を食まれて、ビクリと身体が震えた。
私は睨みながら、目の前の彼を少し遠ざける。
「・・二条先生は、全てが規格外過ぎて上手くやっていけるか自信がない・・。」
「二条先生じゃなくて、名前で呼んでくれないか?これから一緒に暮らすんだからな。」
慧の揺れる瞳に私が映し出されていた。
不安そうに、でも明らかに嫌そうじゃない表情の私が。
頬に触れた慧の手は熱かった。
バスローブ姿で、まだ少し水気の残るその髪も美しい大きな切れ長の目で見つめられるとドキドキした。
「美桜・・。君の瞳の色は不思議だ、金色にも、焦げ茶色にも赤にも見える。」
私の瞳をじっと見つめたままゆっくりと近づいて唇を重ねた。
角度を変えて次第に激しくなる口づけは、歯列をなぞる様に舌が入り込んで深くなっていく。
私は脳みそが溶けてしまうかのように何も考えられなくなっていた。
呼吸が出来なくなって酸素を求めて離すと慧が切なそうにこちらを見つめる。
「ああっ・・・。あの、に・・二条せんせい・・。はげし・・っ。」
すぐに再開される唇を奪う仕草に翻弄されていく。
不安そうに見上げる私の瞼にも口づけた。
「もう・・無理。ごめん・・おれにも止められない・・。」
頭をしっかりと離さないように支えた慧の仕掛ける激しいキスに、私は身体を支えられなくなっていく。
ずるっと体がよろめいて、咄嗟に抱き留めた慧が涙目になった私を上から見上げた慧が真っ赤になる。
「美桜・・。それ駄目。ヤバい・・・。」
「何ですか・・。これ以上・・キスされたら、死んでしまいます・・。」
「可愛いね。キス以上の事を今からするけど何回死ぬのかな?死んだら生まれ変わればいい。新しい美桜になれ。」
ぐったりとした私を撫でながら嬉しそうに微笑んだ慧は、姿勢すら保てなくなった私をそっと持ち上げてリビングの隣へとゆっくり運んだ。
白い壁紙と、高い天井の部屋の真ん中にあるベッドへとそっと下された。
フワフワで弾力のあるベッドの寝心地が気持ちよくて驚く。