ご令嬢は天才外科医から全力で逃げたい。

「別に・・。睨んでるつもりもないが。
そんなに人災がお前に及んでるなんて申訳なかった。
それよりもあんた、・・何故、俺を避ける?」

ギクリとした表情を晒してしまったであろう私は、ダラダラと汗をかいていた。

よし、取りあえず適当に答えとこう・・。

「避けているつもりはありませんけど・・。
でも、黙って睨まれた挙句ジーツと見つめられていたら普通に怖いです。
私は、貴方から威圧感しか感じません。」

真ん中に位置する守田寛貴は、慌てて右往左往しだした。

「こいつは、昨夜からの時差ボケでね・・。
言葉や態度がちょっとキツイんだけど、悪い奴ではないんだよ!!
時差ぼけのせいか、八つ当たりみたいな感じかな・・。」

「ふーん・・。見た目は大人しいお嬢様風の容貌なのに喋ると全然違うんだな。
俺に見つめられたら、大抵は赤く頬を染めるか、恥ずかしくて目を反らす
ご令嬢が多いんだが、君は不快そうだった。
やはり、そんな理由でもなさそうだな。」

・・・は?

今、この男・・何て言った?

ちゃっかり自慢しませんでしたか?

ムッとした私はつい声を荒げた。

「私がここに残ったのは、貴方にお礼を伝えたかったんです。
倒れた男性の容態も気になってこちらで待たせてもらいました。
別に、貴方目当てでもなければ、貴方に見られて頬を染める予定もありません!
でも、患者さんを助けて頂いてありがとうございました。
私はそろそろ会場に戻りますね。・・・失礼します!」

深々と頭を下げた私は、病院の出口を出てタクシープールへと向かう。

歩きなれないハイヒールを必死に前へと運んだ。

タクシーのドアが開いて、サッと乗り込むと私の腕を誰かがぎゅっと掴んだ。
驚きの表情で振り返ると、さっきの男性がタクシーの外から私を掴んでいたのだった。
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