愛しくて苦しい物語
赤ずきん

〜プロローグ〜
涼しいそよ風に木々も喜んでいるようだ。その木々から溢れる光に芽も喜ぶ。その様子を見て、村の少年「ジン」は悲しそうに見ていた。
昨日、ジンの母はこの世を去った。父はジンが産まれる前に亡くなっていて、ジンには母1人だった。何でも優しく微笑んで、母はジンの話をよく聞いてくれた。その母の姿はもうここにはない。
(母が死んでも世界は1つも変わらない。僕の世界では一大事なのに…)
目が熱くなる。ジンは1滴の涙を流した。

池の中の魚達は毎日、いつものように泳いでいる。死んだ目をして。小魚達は前の仲間と同じように泳いでいる。はぐれれば死んでしまうから。森の住人である少女「ステラ」はその様子を苦しそうに見ていた。
(もう…こんな生活嫌だ…)
同じ年齢の子どもを捕まえては、森の奥に連れ込み、仲間達と一緒に喰らう。叫び声や肉が引きちぎれる音…。考えただけで嫌気がさした。
(普通の子どものように遊びたい…)
ステラは赤いずきんを深く被った。
(でも、仲間達にそれを話せば、殺される…)
今日も始めよう…いつものように…。
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