ナミダ列車
「お姉ちゃん、旅に出てくる」



リュックの中には財布とスマホのみ。
スマホは置いていこうかと思ったけど、流石に持っていく。



「忘れなきゃ」



少しでも別のことを考えて忘れたい。
片恋電車を失恋電車にするために。
吹っ切るためにあたしは電車に乗る。



マンガの世界みたいに電車で出会いがあったりしないかななんて考える。
でも、そんなのがあってもあたしの中には瑛太が残るであろう。
それがまた虚しいんだ。



「忘れ方わかんないよ」



付き合ってる間、大事にしてもらえなかったわけでもない。
充分大事にしてもらってた。
それだけでも贅沢なことなのに、それだけでは我慢出来なくなったあたしが悪いんだ。



「とりあえず行こう」



行く宛なんかない。
まずはこの電車に乗って。



カードをピッと鳴らして改札を通る。



「次くるやつに乗ろう」



なんてひとり言を呟いているとふと隣に視線を感じる。

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