Designer Baby
「意味ないよ、そんなもの書いても。」





「当たり前だろ。愛ちゃんはまだまだ生きていくんだ。



こんなもの、書く必要なんてない。」








「ふふふ。」







「え?」








私は、思わず吹き出してしまった。






私が言う、遺書の必要がないってそういうことじゃないのに。







「私は、誰にも思いを残すことなんてない。



だから、私は遺書を書く必要なんてないんです。



どんな診断を受けても、私は1人で受け止めないといけない。



診断されても、相談相手もいなければ私の病気を聞いても誰も悲しい気持ちにならない。」






「やっぱりな…。」






「何?」







「愛ちゃんは、何か勘違いしていることがある。」







「え?」





「愛ちゃんは、近くにいる人をただの他人としか思ってないのかもしれない。



それか、相談しても意味が無いと思ってるのかもしれない。




でも、俺は愛ちゃんがちゃんと病気と向かい合えるように、これからの人生の分岐点に立った時に1人で迷わないように支えていきたいと思ってる。



暗闇の中を1人で歩いていてほしくないんだ。




それに俺は、愛ちゃんを先生として支えていきたいわけでもないんだ。




言葉で説明するのは難しいけど、1人の人間として君を守っていきたいんだ。」




「どうして…。」




「えっ?」





「そうして、出会ったばかりなのにそんなことが言えるわけ?」




「愛…。」





「意味…分からないよ。」





私は、先生の言葉にどう答えていいか分からなかった。




この人は、必要以上に私に関わろうとしているのではないか。



この人の気持ちに答える必要なんてないと思った。






私は普通の人間じゃない。






デザイナーベイビーなんだから。
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