Designer Baby
ーside奏汰ー

午前中の、診察ラッシュが終わり、午後の2時半ようやく昼休憩がとれた。



背中を大きく伸ばしていると胸ポケットに入っていた携帯が鳴った。




電話の相手は、懐かしい人だった。





その人は、高校の時の恩師。




担任であって、俺をこの仕事に導いてくれた人。





散々お世話になったっけ。





でも、どうしたのだろう。





「はい。」





「あっ、城山君。久しぶり。」





「お久しぶりです。」






「あの、折り入って話があるんだけど…。

今、時間大丈夫そうかい?」






「はい。大丈夫です。」





「実は、4月の健康診断である問題が見つかった子がいてね。



今高校1年生の女の子なんだけどね。



心臓のX線写真で問題が見つかったらしい。




詳しいことは、その子にはまだ通達してなくて。



それで、君に保健室の先生としてうちに来てくれないか?」






「急ですね…。」



それに、本人に通達してないのか…。




それって、何かあった時手遅れになったりしないのか?





「もちろん、強制はしない。
でも、うちの学校には医療の知識がなくて素人同然の人ばかりなんだ。
保健室の先生はいるんだけど、正直信用できなくてね…。
本人に、いきなり学校を変えろなんて言いたくなくて。
彼女には、皆と同じように勉強して3年間ここで学んでほしい。
彼女の未来を、ここで見守りたいんだ。
そのためには、君の力が必要なんだ。」






先生の、言葉に俺は考えさせられた。





たしかに、いきなり病気を言われたら不安になるし怖いよな。




そんな時、その子の心を支えるために保健室の先生はいるんだよな。



保健室の先生が、頼りにならないなら俺が助けに行くしかないよな。





それ以外に、選択肢はなかった。





「それから、その子はちょっと特別な家庭環境で、今一人暮らしをしている。」






「え!?」






心臓に病を抱えているとしたら、いざという時は危ないんじゃないのか?






そもそも、どうして1人で暮らしているのだろうか。





まだ、15歳の高校1年生だよな…。





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