【短】先輩、笑って
先輩、今、なんて言いました?
私の名前を、呼んだ?
混乱したままグラウンドを駆ける先輩を見つめる。
───ピーッ
前半戦終了のホイッスルが鳴ってハッとした時には、私の目の前に先輩が駆け寄ってきていた。
「せん、ぱい?」
まずは、先制点のことを褒めたいのに。
やりましたね!って、そう言いたいのに。
「みぃ」
先輩が私の名前を呼ぶから、何も言えなくなってしまう。
「先輩?私のこと…」
「うん、分かる。ごめん、ずっと待たせたね」
「…っ!!」
ギュ、と先輩の体が私を包み込む。
周りの選手達も、そんな私達を見て嬉しそうに笑っていた。