【短】先輩、笑って




栗色の長い髪を靡かせ、真っ直ぐに先輩を見つめる彼女は、先輩と隣のクラスだという琴音 (コトネ) さん。



最近先輩といい雰囲気だと噂になっている人だ。




「迎えに来ちゃった」

「サンキュ。今行くから待ってて」

「うん」




優しく琴音さんに笑いかける先輩に思わず目をそらす。





…見たくない。



先輩が、他の人に笑いかけるところなんて。






「…あら?あなた、」

「…っ!」



先輩が着替えに戻ったタイミングで、琴音さんが私の存在に気付いた。





「美奈ちゃん、よね?まだマネージャーなんてやってたの?」

「……」



可愛い顔して私には容赦がない琴音さん。





…元はと言えば、あなたのせいなのに。




そう考えてしまう黒い自分が憎い。






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