【短】先輩、笑って
「まだ思い出さないんだ?臣くん」
「……ッ」
琴音さんの言葉が、酷く胸に突き刺さる。
「よっぽどどうでもいい存在だったのね」
「そんなこと…」
「あるじゃない。みんなの事は分かるのにあなたのことだけ分からないなんて変よ」
「それは…っ、」
何も言い返すことができずに口籠る。
「…美奈?どうかした?」
「っ、せん、ぱい」
そのタイミングで、着替えを終えた先輩が戻って来た。
「え、ちょ、なんで泣いてんだよ!?」
私の顔を見た先輩が慌てて駆け寄る。
「や、やだなぁ。泣いてませんよ」
そんな嘘をついたところで、実際に涙が流れている以上逃げる事は不可能だった。