【短】先輩、笑って
「琴音、悪いけど今日は1人で帰ってくれ」
「…え?」
「大事な後輩が泣いてんだ。放ってなんかおけない」
必死に涙を抑えようとする横で、そんな先輩の声が聞こえた。
…ダメですよ、先輩。
私なんかに構ったら、ダメです。
そう言いたくても言わないのは、やっぱり先輩と一緒にいたい思いがあるから。
ずるいんだ、私は。
「〜っ、分かったわよ」
諦めたらしい琴音さんは、さっさとこの場から離れて行った。
鋭い視線を感じたけど、怖くて顔なんかあげられない。
「…大丈夫か?美奈」
先輩が優しく声をかけてくれたけど、その言葉で余計に涙が溢れてしまった。