【短編】夏恋~君とふたりっきり~

「おー、いい感じ!とれてきた!」


「ほ、本当?」


その時、ドーンと花火が鳴り、周りの人たちが一斉に同じ方向を向いて笑顔になった。


「花火始まっちゃったね…ごめんね、なんかこんなことさせちゃって」


「謝ることじゃねーし」


咲斗くんが私の隣に座った。


ありえないよね…せっかくのお祭りで浴衣のシミをとらせるなんて。


そのせいで花火会場着く前に花火始まってしまったし。


なんか私、かっこ悪いよ、早く帰りたい。



「純子たちともはぐれちゃったね…探そうか?」


沈黙にいたたまれなくなって立ち上がろうとした時、グッと手を掴まれた。


「えっ」


「探さなくていーんじゃない。ふたりっきりにさせとけば」


「あ、そうだね…」


私ってば気が利かない。


てか、手……

手を離してくれない。


な、なんで!?離し忘れ!?


< 10 / 13 >

この作品をシェア

pagetop