【短編】夏恋~君とふたりっきり~
「めーわく?」
私は慌てて首を横に振る。
「私もずっと見てたから。咲斗くんのこと…」
「マジ……か」
「咲斗くんと話せるとすごい嬉しくて……だから今日も緊張しちゃってて」
「なんだそれ、可愛すぎだろ」
咲斗くんが無邪気に笑う。
「あ、笑い方もすごく好きでっ…」
「なんか、これから笑うの恥ずくなんな」
そう言いながらも嬉しそうに微笑む。
まさか、咲斗くんも私と同じ気持ちでいたなんて……。
「信じられないよ」
そう呟いた次の瞬間、私の丸出しのおでこに、温かいものが降ってきた。
おでこに、き、キス!?
「これで信じた?」
咲斗くんがすぐ側で笑った。
そして目が点になってるであろう、私の顔に静かに近づき、鼻と鼻をくっつけた。
「その反応ヤバイ」
「さ、咲斗くん、近っ……」
キスされちゃうのかと思ったけど、咲斗くんはそのまま離れた。
「そんな七海の可愛い顔、他のやつに見せたくないんだけど」
「え……」
「チューは誰もいないとこでするから」
イタズラな笑みを見せる咲斗くんに、胸がときめく。
「よし、花火観に行こ」
私の手を引っ張って立たせてくれた。
恋人繋ぎになったのが信じられないけど嬉しくて。
忘れられない夏祭りになった。
END