【短編】夏恋~君とふたりっきり~
ドンッ!
急に小さな男の子とぶつかり、私は手に持っていたかき氷を少しこぼしてしまった。
「すいませんっ!うちの子がっ…コラ!走っちゃダメでしょ!?お姉さんのかき氷こぼれちゃったのよ!?」
近くにいた母親らしき人が男の子を叱っている。
男の子は今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「大丈夫ですから!かき氷もほとんどなかったし、気にしないでください!」
「本当にごめんなさいね…」
私はしゃがんで、泣きそうな男の子と目線を合わせた。
「大丈夫だからね?」
「うん…ごめんなさい…」
震える小さな声で謝られた。
せっかく楽しんでいたお祭りを台無しにさせたくないな…
「ちゃんとごめんなさい言えて偉いねーっ!」
男の子の頭を撫でると、照れくさそうに笑った。
親子がその場を去ると、近くで見ていた咲斗くんに「裾汚れてる」と言われた。
「え!」
見ると裾にかき氷のピンクのシミがついていた。
やだ!さっきぶつかった時のだ……
「七海、ハンカチとか持ってる?」
「うん…」
「ちょっと待ってて」
咲斗くんが私を影の方のベンチに座らせると、走ってどこかへ言ってしまった。
ふっと周りを見ると純子たちの姿もない。