女トモダチ
まさか『行く』なんて言わないよね……?

そんな選択肢って普通ない。

あたしが逆の立場だったら、絶対にいかない。

遠慮する。

大丈夫、だよね。きっとセイラだって気を遣ってくれるはず。

ちょっと鈍感なところもあるけど、さすがに分かるよね……?

恐る恐るセイラの答えを待つ。

「え……、私も一緒に行ってもいいの……?」


セイラはあたしの顔色を伺っている。

その反応って……、まさか一緒に行きたいってこと?

嘘でしょ?3人で映画……?

セイラの答えに絶句する。

お願いだからちょっとはあたしの気持ちを察してよ。

お願い。今日は二人っきりでいきたいよ。だって……念願のデートだから……。

ハルトに誘われたのもこれが初めてだし……だから……。

「あたしはいいけど……チケットは4枚あるんだよね?3人で行ったら1枚余っちゃってもったいないよね?」

今思いつく限りの言い訳をする。

セイラ、お願い……。あたしの気持ちに気付いて。今日は。今日だけは……二人っきりにして?

ようやく巡ってきたチャンスなの。だから――。

「えー、何?そのチケット1枚余ってんの~?なら俺にくれよ!」

近くで話を聞いていた男子が割って入ると、セイラの手からチケットを引き抜いた。

「あっ……」

「おい、お前強引だろ」

困ったような表情を浮かべるセイラに気付いたハルトがクラスメイトを睨む。

「え~?神条さん、いいよね~?」

「あっ……うん……」

断り切れなかったセイラがうなずいた途端、心の中がどんよりと暗く沈んだ。

どうしてこうなるの……。行き場のない感情だけが募る。

「じゃあ、HR終わったらすぐ行こう。急げば17時の回で観られるから」

ハルトはそう言うとなんてことないように自分の席に戻っていく。
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