女トモダチ
「あらっ、これ駅前にある美味しいって有名な高級パン屋さんじゃない!こんなにたくさんいいの?逆に申し訳ないわ」

「いえ、いいんです。お口に合うかわからないんですが、よかったらどうぞ」

穏やかな口調で言うセイラに母は「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて」と心底嬉しそうに受け取った。

そして、弟たちはパンを見るやいなやすぐさま誰がどれを食べるのかで喧嘩を始める。

「ちょっと、セイラちゃんの前でみっともないことするんじゃないよ!ごめんねぇセイラちゃん。うちの家はごちゃごちゃしててうるさいでしょう?」

「そんなことありません!私は賑やかな真子の家に憧れます」

偽善者。何が憧れるよ。心の中で呟く。

あたしの生活とセイラの生活を交換してって頼んだら、絶対に断るでしょ?

絶対に無理だから。お嬢様のセイラにはあたしのこの生活なんて耐えられるはずがない。

本当は心のどこかであたしのことを見下して優越感に浸ってるんでしょ?

「あらっ、嬉しいこと言ってくれるのね。あっ、ちょっと待って。昨日作ったプリンがあるの。よかったら食べて行って!」

「あっ、お構いなく」

キッチンに向かいバタバタと動き回る母にそう言うと、セイラが恐る恐るあたしに視線を向けた。
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