女トモダチ
朝から保健室に来る人はあまりいない。
保健室の前に立ったまましばらく動けなかった。
この中にはセイラとハルトがいる。
今、この中に入って二人に会ったところであたしはどうしたらいいんだろう。
でも、ずっとこの場所に立ち続けているわけにはいかない。
保健室の扉を開けると、消毒液の独特の匂いが鼻に届いた。
中はシーンっと静まり返っている。
何故か急かされるような気持ちで部屋の奥にあるカーテンに手をかけた時、物音が聞こえた。
ギシッというベッドの軋むような音の後、「ダメだよ……」と女の甘い声がした。
その声を聞き間違えるはずがなかった。
中学のときからずっと隣で聞いていた声。
高くておっとりとした男が好む女らしい声。
手が震えて呼吸が浅くなる。
カーテンを震える指先でつまみ、ゆっくりと引っ張る。