女トモダチ
「すみません。誰か……いませんか……?」

不気味にシーンっと静まり返った室内に足を踏み入れる。

セイラの家の前まで来たことはあるけれど、部屋に入ったのはこれが初めてだ。

「おじゃま……します」

扉を後ろ手で閉めて玄関先で靴を脱ぐ。

真っ暗で何も見えない。

仕方なくスマホを取り出して足元を照らす。

ツルツルと光る廊下をゆっくりと歩く。

全面大理石でできているようだ。

足の裏がひんやりとして全身に鳥肌が立つ。

心臓の音が更に大きくなった。

「セイラ……?」

名前を呼びながら周りの物音や気配に気を配る。

もしも、人格がリカのままだったら後ろから襲われてもおかしくはない。

ぞくっと背筋に冷たくなる。

廊下には扉がたくさんあり、どこに繋がっているのか予想もできない。

仕方なく突き当りのスライドドアを開けた。

その瞬間、中から異様な匂いが鼻についた。
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