女トモダチ
「お願い、真子。今までに起こったこと……私に全部話して?」
セイラに頼まれて、あたしは今まで起こった出来事をすべて洗いざらい話した。
あたしがハルトを入学式から好きだったこと。そのあと、セイラが付き合ったこと。
そのときに感じていた感情も隠すことなく話した。
嫉妬、憎しみ、怒り、ねたみ、ヒガミ。
真っ黒い感情を抱いていたこともすべて。
そして、セイラの中にいるリカという存在のことも。
「怜音先輩に振られたのも……そのせいだったんだ」
セイラはポツリと漏らした。
「どういうこと?」
「先輩とはうまく付き合ってると思ってたんだけど……。アンタみたいな男と付き合ってても楽しくないとか……先輩色々あたしに言われたみたいで。きっとリカは私と先輩を別れさせようとしてたんだね。それを私は知らなかったから、『あんなひどいこと言っておいてよく平気な顔でいられるな』って言われちゃった」
確かに蘭に以前聞いていた。先輩とセイラが別れたという話は。
でも、それもリカの仕業だったのかもしれない。
リカは自分がセイラを乗っ取るためには手段を選ばなかった。
「ごめんね……。セイラ……。あたし……あたし……セイラにひどいことたくさんした……」
謝ることしかできない。
あたしは最低最悪な行為をしてセイラを傷つけた。
励ましてあげる権利なんて今のあたしにはない。
セイラは首を横に振った。
「真子が悪いんじゃない。私と……私の中にいるリカという人格が悪いの」
セイラはポロリと涙を流した。
「うちの両親はね、お金ならいくらだってくれたの。だけど、愛情は一つもくれなかった。いつもひとりぼっちで不安で孤独で……。生きていることが辛かった」
「うん……」
「学校でも、リカが色々な悪さをしたんだね。私の周りにはいつも誰もいなくて……。でも、真子だけだった。私に声をかけてくれたのも、親友だって言ってくれたのも。本当に本当に嬉しかった。だから、真子が私といることで劣等感を抱いているなんて知らなかった」
セイラは話してくれた。
放課後、どこかで食事をしようと誘いあたしをご飯に連れて行ってくれたのは自分の為だったと。
一人で食べる夕食は大っ嫌いだった。
でも、あたしと一緒に食べると美味しかったと。
「今日、真子の家でみんなでご飯を食べられて……本当に幸せだったよ。今まで生きてきた中で一番楽しい夕飯だった」
セイラは涙を流しながら幸せそうに微笑んだ。
「セイラ、ごめん。あたし……あたし……」
セイラにつられて涙を流す。
あたし、本当に最低最悪だ。
自分のしてしまったことへの後悔で胸がはちきれそうになる。
「真子、お願いだから謝らないで。逆に……私のほうこそごめんね。こんなことに巻き込んでしまって」
「セイラのせいじゃな――」
「真子、今までありがとう。それと、これ。本当はもっと早く渡したかったんだけどなかなかタイミングが合わなくて……」
セイラは震える手でポケットの中から取り出したゴールドの星のヘアピンを取り出した。
それは以前、セイラがあたしの為に作ってくれると約束していたピンだった。
「遅くなってごめんね……。もっと早く渡すべきだったね」
セイラはそう言うと、力なく立ち上がった。