女トモダチ
「元カノのこと、ハルトすっげぇ好きだったんだ。だから、別れた時も相当ショックだったみたいでさ。でも、最近は池田と一緒にいるときのハルト、すげぇ楽しそうだから俺的には嬉しくて」

ハルトに元カノがいるなんて想像もしていなかった。

だけど、よくよく考えたらハルトはカッコいいし女子からもモテる。

彼女がいたとしても不思議ではない。

頭では理解している。でも心がそれを拒否する。

ダメだ。林君の言葉が全然頭に入らない。

「なんか池田って雰囲気がその元カノと似てんだよ。だからハルトも入学当初から池田のこと気になってたみたいでさ」

あたしと元カノが……似てる?

「でも、過去のことでハルトのやつ少し臆病になっててさ。だから……って、俺何言ってんだ!」

一方的に言葉を切る林君をあたしはぼんやりと見つめることしかできない。

「とにかく、ハルトとこれからも仲良くしてやってくれよ!よろしくなっ!」

林君はポンッとあたしの肩を叩くと、横を通り過ぎていく。

あたしは呆然と立ち尽くす。

さっきまでの幸せな気持ちが一転して、胸の中に鉛を押し込まれたかのようにずっしりと重たくなる。

ハルトって……付き合ってた子いたんだ。

その子のこと、すっごく好きだったんだ……?

しかも、その元カノ……あたしと似てるの?

見たことのない架空の彼女を想像すると、更に心の中が重たくなる。

ハルトはあたしと話しているとき、あたしを通して元カノを思い浮かべているのかもしれない。

「あたし、バカみたい」

ポツリと言葉が漏れる。

ハルトがあたしのことを好きなのかもと期待していた自分自身があまりにも惨めで、心の底から情けなかった。


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