女トモダチ
それなのに、どうしてだろう。どうしてあたしの心の中は嵐みたいにかき乱されて荒れているんだろう。

「ていうかさ、もしあたしがセイラと同じ人……例えばハルトを好きだったとしても、あたしはハルトをセイラに譲る気はなかったよ?」

そもそもあたしはセイラがハルトを好きだと知らなかった。

でも、もし知っていたとしてもあたしはセイラにハルトを譲る気なんてこれっぽっちもなかった。

それほどまでにハルトのことが好きだったから。

「もちろん。私がそうしたっていうだけの話。でも、よかったなぁ。真子と同じ人を好きにならなくて」

セイラの言葉はあたしの感情を逆なでする。

「……そうだね」

感情がこもらず、棒読みになってしまう言葉。

「あっ、私ね誰かと付き合うの初めてだから。色々協力してくれる?」

協力って?いったい何を協力しろって言うの?

「……真子?」

黙って一点を見つめたままのあたしにセイラが不思議そうに首を傾げる。

「あっ……うん……。あたしにできることなら」

「ありがとう、真子!」

セイラが嬉しそうに微笑む。

あたしはそんなセイラを見て「おめでとう」の一言さえかけてあげる余裕はなかった。
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