女トモダチ
背中からジリジリとした真っ黒い感情がせりあがってくる。

セイラはズルい。

あたしが持っていないものをすべて持っているくせにハルトまで欲しがるの?

お金持ちの両親と高層階の超高級マンション。

運動だって勉強だって校内で負け知らずで、中学から毎年何かしらのコンクールに入賞していて。

書道、ピアノ、英語、茶道などの習い事もしている。

可愛いと綺麗の両方を持ち合わせた容姿に、染めていないのに色素の薄い茶色い髪の毛。

雪のように真っ白で長い手足。

おっとりとしたしゃべりかた、柔らかい微笑み、白く綺麗に整った歯。

毎年長期休みでは海外に行き、見たこともない可愛らしいお土産を買ってきてくれるセイラ。

『いつもありがとう』

『気にしないで。私が真子に似合うかなって思って勝手に買ってきただけだから』

って完璧な嫌味のない言葉で流すセイラ。

一方で金銭的に余裕のないうちは家族で海外どころか国内旅行に行くこともない。

それを、セイラは知らない。

あたしがいつもセイラとの違いで悩んでいたことも、傷付いていたことも。

屈辱的な気持ちになっていたことも。

あの子は全部知らない。

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