女トモダチ
「ちょっと前に、あたしが色々言ったから。真子とハルト君って仲良いとか……さ」

「あぁ……」

『あたしはハルトなんて好きじゃないから!!むしろ、嫌いだし!!』


あたしの言葉はきっとハルトの耳にも届いていたに違いない。

あの日を思い出すだけで胸が張り裂けてしまいそうになる。

「別に蘭のせいじゃないよ。もしもハルトがあたしを好きだったとしてもあれぐらいのこと言われただけですぐに嫌いになるなんてありえないし」

そう思わないと後悔で心が壊れてしまう。

笑顔を崩さないように必死に頬を持ちあげる。

「いや、でもさハルト君って昔の彼女と色々あってさぁ」

「あっ、そっか。蘭もハルトと同中だっけ?」

「そうそう。しかも、3年間同じクラスだったから結構色々知ってるんだよね~」

得意げに話す蘭。

「その元カノ、浮気してたんだって。それでそれを問い詰めたハルト君に彼女が言った言葉が……『あたしが全部悪いわけ?ハルトのこともう嫌いになったから』だった気がするんだよね」

「え……?」

「こないだの真子の言葉でハルト君昔のこと思い出しちゃったんじゃない?だからセイラと――」

あたしも言ってしまった。ハルトに。

『むしろ、嫌いだし!!』

って。言葉は少し違うけど、同じニュアンスのことを言ってしまった。

「――ち、違うよ。蘭の考えすぎだって。あたしちょっとトイレ行ってくるね!」

ハハッとおどけたように笑って席を立つ。

そっと手を持ち上げて指先を見つめる。

蘭の言葉に手が震えるぐらい動揺してしまっている。

知らなかった。ハルトと元カノにそんな事情があったなんて。
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