女トモダチ
「それって新手の嫌味?」

「え……?」

「セイラはあたし達家族の生活なんて一日だって耐えられないと思うよ?」

「そんなことないよ!私は真子の家族って素敵だと思う!中学の時だって運動会で手作りのお弁当を作って応援に来てくれてたでしょ?ああいうの私はすごく――」

「――やめてよ!!」

セイラの言葉を制止する。

思い出したくもない過去の話を唐突に始めたセイラに怒りが募る。

中学の運動会の昼食はクラスをいくつかに分けて家族を交えて食べるのが恒例だった。

それぞれが持ち寄ったおかずを全員で食べるということもあり、周りの友達の家はみんな市販されたオードブルなどを持ってきていた。

セイラのお母さんは仕事でこられなかったけど、大量の宅配ピザを届けてくれた。

セイラの家からのピザをみんな嬉しそうに食べていた。

それなのに、うちだけは家で作ったへたくそな卵焼きや安物のウインナー。

しまいには手作りの大量のおにぎり。

『私、自分の親以外が作ったおにぎり食べられない』

『なんだか汁が出てません?この時期の手作りのお弁当は食中毒が怖いからうちの子にはちょっと……』

生徒も保護者も母が作った手作りのお弁当にはほとんど手を付けなかった。

その場にいたあたしは顔から火が出るぐらい恥ずかしかった。

『あそこの家は子だくさんで貧乏だから』

と笑われているのを知っていたから。

でも、セイラだけは違った。

市販の物やピザには一切手を付けず、母が作ったお弁当ばかりを『美味しい』と繰り返しながら食べた。

母はそれを喜び、『やっぱり運動会のお弁当は手作りじゃないとね!』と言ってのけた。

そのたびにあたしが恥をかいたのをセイラは知らない。

セイラが『美味しい』なんて余計なお世辞を言わなければそんなことにはならなかったのに。

あたしが恥をかくこともなかったのに。

「知りもしないくせに勝手なこと言わないでよ!」

感情が高ぶって大きな声になってしまった。
< 59 / 231 >

この作品をシェア

pagetop