女トモダチ
「私……何か悪いことしちゃったのかな」

「え……?」

「ううん、なんでもない。あっ、そうだ。今日付き合ってくれたお礼させてくれる?」

「そんなのいいって」

「ダメダメ!この近くにね、パスタの美味しいお店があるの!食べて帰ろう?」

「でもいつもセイラにごちそうしてもらっちゃってるし……」

セイラはあたしが普段家族にも連れて行ってもらえないような高級なお店に連れて行ってくれる。

会計は全てセイラ。

いつもレジの前であたしは申し訳なさと虚しさでいっぱいになる。

セイラとの差を見せつけられているようで。

「そんなこと気にしないで!私が真子と一緒にご飯を食べたいんだから」

「うん……ありがとう」

何も知らないセイラはあたしの腕に自分の腕を絡ませて歩き出す。

「何食べようか?パスタもいいけど、ピザも美味しいんだよ」

横を通り過ぎていく男子高校生がセイラに目を奪われている。

隣にいるあたしのことなんて全く眼中にない様子だ。

「君、可愛いね~!ちょっと遊ばない?」

映画館を出るとすぐ、見るからに遊び人風のいでたちのチャラい男が声をかけてきた。

「すみません」

丁重に頭を下げて断るセイラ。

「ねぇ、友達も一緒でいいからさ」

男の言葉はあたしを簡単に傷付ける。

友達も一緒でいい、ってなに?セイラだけを誘ってるのが丸分かりだから。

あたしはセイラのおまけに過ぎない。

「急いでいるので」

セイラが足を速める。

「チッ!お高く留まりやがって。このブス!」

男の怒りの矛先はセイラではなく、何故かあたしに向けられる。

どうしてよ。あたしは何も言ってないじゃない。

なんだかすごく損をした気分。

「あっ、真子!今日はデザートも食べようね!真子の大好きなパフェもあるよ!」

セイラはさっきの出来事を気にも留めていない。

それなのにあたしは悶々とした気持ちを抱えてしまっている。

悔しい。悔しくてたまらない。

あたしはセイラといると、劣等感の塊になってしまう――。
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