女トモダチ
「そんな!真子が謝ることじゃないよ!!」

「え……?」

セイラは意外な反応を見せる。

「だって、誰かを好きになる気持ちって理屈じゃないから。清水君……いつから真子のこと好きだったんだろう。私と付き合ってるときからかな……それともその前からだったら……清水君につらい思いさせちゃったよね」

「なんでセイラがハルトを気遣ってるの?おかしくない?」

告白して無理にokをもらって付き合い始めたという二人。

でも、ハルトはその間もセイラの親友であるあたしが好きだった。

付き合っている間、彼女の親友が好きだという気持ちを抱えていたハルトの心情なんて考える必要ある?

そもそも、ハルトがセイラとなんて付き合わなければよかったんだ。

好きじゃないのにセイラと付き合う必要なんてなかった。

よく考えたらハルトを好きじゃないといったあたしへの当てつけだし。

ダメだ。イライラが止まらない。

セイラだけではなくハルトにまで怒りが沸き上がってきた。

「そうかな……?でも、好きな人には幸せになってほしいから。私じゃない誰かだとしても、彼を幸せにしてくれるならそれでもいい」

ハァ……?思わず苛立く。何言ってんの?誰かを好きになるのは理屈じゃない?

好きな人には幸せになってほしい?ありえない!

あたしなら逆。そんな仕打ちされたら、絶対に幸せになってほしいなんて思わない。

むしろ、地獄に落ちてしまえと願う。

不幸のどん底まで落ちろ。そして、あたしを振ったことを一生後悔させてやるとすら思う。

世間一般的に考えたら、あたしの意見のほうが多いはず。

セイラみたいな綺麗事をいうのは偽善者だ。

そんな綺麗事で済まそう言って言うの?

お嬢様でお金持ちのセイラはきっと経験したことがないんだ。

人の悪意を。誰しもが持っている真っ黒くてドロドロで嫌な人間の部分をセイラは何も知らない。

それが許せなかった。いつも高みの見物のように涼しい顔をしているセイラが。

白を黒に変えるなんてたやすいこと。

いや、グレーでもいい。

白い絵の具に一滴の黒い絵の具をたらして混ぜたら、たちまちグレーに変わる。

グレーになってしまった絵具を白に戻すのは大変だ。

セイラに思い知らせてやる。そんな思いが体中を支配する。



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