女トモダチ
「それで、清水君に返事はしたの?」

「ううん、まだ。でもさ……セイラの気持ちを考えると……やっぱり……」

「私のことなら気にしないで?真子も清水君のこと気になってるんじゃないの?」

困ったように顔を歪めると、セイラはにっこりと笑った。

「……うん」

セイラの目を見つめながらうなずく。

自分の親友に大好きな彼氏をを取られる気持ちはどう?

ね、すごく嫌でしょう?あたしは……嫌だった。

セイラがハルトと付き合い始めたと聞いたあの日、嫌で嫌でたまらなかった。

「そっか。真子と清水君、すごくお似合いだと思う。私、全力で二人を応援するからね!真子、本当におめでとう!」

自分がハルトと付き合ったと話した日よりも嬉しそうに祝福してくれるセイラ。

さっきまでハルトと別れたと泣きそうな顔をしていたのに、今度は自分のことのように幸せそうな笑みを浮かべている。

なによ。なんなのよ。どうしてそうなの?

あたしはセイラに『おめでとう』って言ってあげることができなかったのに。

それなのにどうしてあたしには『おめでとう』というの。

どうして。どうして。どうして。

セイラに笑顔を向けられると惨めな気持ちにある。

ハルトと付き合うことであたしはセイラに勝ったと思ったのに。

それなのに、どうしてこんな気持ちになるの……?

どうしてそんなに余裕なの?あたしはグッと拳を握り締めて感情を堪えた。
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